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静かな朝。オーキド博士から通信が入る。
オーキド博士「ちょっと君に話があるんじゃ。ピカチュウを連れてこっちへ来てくれんか?」
僕はピカと一緒にオーキド博士が待っている場所へ向かった。
オーキド博士「おお、来たな。」
そこは僕はピカチュウと初めて会った場所。ここで僕はピカチュウと出会い、そしてピカチュウと友達になれたんだ。
オーキド博士「君は野生のピカチュウをよくここまで育てたものだ。君とピカチュウは本当の友達じゃな。」
僕「うん、ピカチュウは僕の唯一の大事な大事な友達だよ。」
オーキド博士「うむ、しかしな。そのピカチュウはもともと野生じゃ。野生のポケモンは野生で生きるべきなのじゃ。」
僕「…………。」
僕はピカチュウを見た。ピカチュウは草原で元気に走り回っている。
オーキド博士「ピカチュウと離れたくない気持ちは分かるが、ピカチュウを野生に帰してやれんじゃろか。」
僕「…………。」
分かっていた。いつかこの日が来ることを。分かっているけど、すぐに「はい」と言えない。
オーキド博士の言う通りなんだ。野生のポケモンは野生で暮らすべき。いつまでも僕と一緒にいちゃいけないんだ。
僕「………、うん。」
オーキド博士「うむ。そこでピカチュウと本当の友達である君に頼みがある。君にしかできないことだ。」
僕「………。」
オーキド博士「君の口からピカチュウに「さよなら」と言ってあげるのじゃ。」
僕「!」
僕の口から別れを告げる………。いよいよピカチュウとお別れのときが来てしまった。
僕「ピカチュウ!」
呼ばれたピカチュウは僕の元に走ってきた。何をして遊んでくれるのか、期待の眼差しで僕を見つめている。
僕「ピカチュウ………。さ、さ、さ………」
言えない………。さよなら、その言葉を言った瞬間に僕とピカチュウは赤の他人になってしまうんだ。野生に戻ったポケモンにまた会えることなんてもうないだろう。
今までピカチュウと遊んだ思い出がよみがえる。釣りをしたこと、子守りをしたこと、宝探しをしたこと、草原で鬼ごっこしたこと、何もかもが楽しかった。
でも、それも今日で終わりなんだ。そう思うと、さよならの言葉がのどまでで詰まってしまう。
そのとき、近くで物音がした。そこにはたくさんの野生のピカチュウがいた。仲間に早く戻ってきてほしいみたいだ。
そう、ピカはあの野生のピカチュウ達と一緒に生きるのが正しいんだ。僕は言わなければならないんだ。さよならを………。
僕「ピカチュウ………。」
ピカチュウ「ピカ?」
………、ピカチュウのためなんだ………。僕はゆっくりと口を開いて、お別れの言葉を言った。
僕「さ、よ、な、ら…………。」
ピカチュウ「………?」
僕「さよなら………、ピカチュウ。」
ピカチュウ「……!! ピカ! ピカ! ピカー!」
瞳を潤わせて泣き出すピカチュウ。僕はピカチュウを見ることができない。心が押しつぶされるみたいだ。僕もつらいんだよピカチュウ! でも! でも!
すると野生のピカチュウ達がピカを呼んだ。ピカはそちらを振り向いた。野生のピカチュウ達はみんな笑顔でピカを待っている。
僕「ピカチュウ、ほら、君の家族や仲間達だよ。さあ、お帰り。」
ピカチュウ「ピカチュウ……。」
ピカチュウはゆっくりと仲間達の方へ歩いていった。こちらを何度も振り返る、目を潤ませたまま。僕はもう、つらくて仕方なかった。でも、こうするしかないんだ。
僕「さよなら! ピカチュウ!」
僕は我慢できなくなってその場を走り去った。
家につき、ドアを開ける前にまたピカチュウとの思い出が頭に浮かんできた。ああ、そういえば、庭でもたくさん遊んだなあ。野菜を掘りまくったり、池に飛び込んだり。
もうピカチュウは僕のそばにはいない。また今日から僕は一人。引きこもりに逆戻りだ。僕が唯一心を許したピカチュウ。そして僕に心に開いてくれたピカチュウ。あの楽しい日々はもう過去のことなんだね。
そして僕がドアを開けて家に入ろうとしたとき、
ドドーーーン!
轟音と衝撃波が辺りを覆った。僕は驚いて転んでしまった。
こ、これはひゃくまんボルト?
その音の方へ振り向くと………ピカチュウがいた!
ピカチュウ「ピーカピーカチュウー!」
こっちに全速で走ってくるピカチュウ。そして僕にぶつかって目を回してしまう。
僕はピカチュウを思いっきり抱きしめた。
僕「ピカチュウ! ピカチュウ! 帰ってきたの? ピカチュウ!」
ピカチュウ「ピカ!」
ピカは引きこもりの僕とずっと暮らしていたため、ピカ自身も引きこもりになっていた。そう、仲間達とのコミュニケーションが取れなくなっていたんだ。
誰とも会話できないピカはどうしようもなくなって僕のところに戻ってきたんだ。
ピカチュウ! やっぱり僕とピカの絆は誰にも壊せないよ! ずっと一緒! ずっと一緒だよピカチュウ!
これからも二人で悪事を働こうね! ピカチュウだーーーいすき!
ピカチュウと遊ぼう 完