夢まつり'95
「夢まつり'95」
これはハドソンが自社のキャラクターを演劇仕立てにして全国を周ったイベントである。そしてその模様を録画したビデオが全国のファミコンショップで当時ハドソンのソフトを買ったときのおまけとして配られていたようである。それがうちにも一本あるのだ。仕方ないので見てみることにする。
今日は5時起きだ。なぜなら自分の部屋にはテレビもビデオデッキもなく、家族に見つからないようにそのブツを鑑賞しなければならないためだ。命を削ってレビューを書く自分に万歳!と思っている自分に腹が立つ。
いよいよビデオを再生することにする。するといきなりめざまし時計がジリリリリリと鳴り騒いでいる画面が出る。そしてそれを止める一人の人物。
「あいやー。8時かー。全く早起きはつらいなー!」
こっちは5時だ馬鹿野郎。そしてこの人物は自己紹介をする。どうやらこの人、ハドソンのCMの声をやってるようだ。あの甲高い声の人である。それでは始まり始まりー。
場面は変わってイベント会場に向かうハドソン一座のバスの映像が出る。
そこでカメラに向かって愛想をふりまく劇団員たち。とてもほほえましい光景だが、最後には悪魔が待ち構えていた。座長の荒井注である。なぜヤツが座長なのかは知らない。もしかしたらこの劇団自体、彼がつくったものかもしれない。ヤツはカメラにピースをした。そのドアップ画面が5秒も続き、私はいきなりめまいがした。
そして会場のセッティング。なんとスタッフは150名だそうである。ものすごい大掛かりなイベントである。
ここでいきなり天外魔境ZEROのCM、もちろん早送り。
画面は暗転。ナレーションが流れる。
「さあて、いよいよ夢まつり'95の始まりだー!」
すると中央にスポットライトが。そこへ最初に登場したCMの声の人がでてくる。大阪のくいだおれ人形のようないでたちで。名前は「赤丸」というらしい。その赤丸を追って兵士風の男が一人現れる。
赤丸「おけつペンペンペン!」
兵士「こしゃくな、このわしにガラクタを売りつけおって!」
赤丸「ガラクタじゃありまへん。それが琥珀やさかい。」
兵士「どうみても1円玉であろう!」
赤丸「それが琥珀いいまんねん。」
兵士「もう許せん!」
そう言って兵士は刀を抜く。そこへ現れる怪しい3人組。
チャンバラシーン。
兵士「今日のところは勘弁してやる。」
そういうと兵士はゆっくりと舞台を降りていった。
3人組「チェッ、すばしっこいやつだ。」
どこがですか?
その3人組の名は「桃太郎」、「ハニー」、「カブキ団十郎」
すいません、「ハニー」って誰ですか?「Bugってハニー」のアレなんでしょうか(のちにどうやらボンバーマンの登場キャラだということが判明)。
そして3人は赤丸に事情を聞く。その概容は
「広井王子という、変なゲーム作家が天外魔境ZEROというゲームを作ったためにこの世界がリセットされてしまった。そのために世界がまた荒れた。」
というものであった。
あーあ、やっちゃった!
何ですぐに自分の名を出すのか。しかも自分で「変なゲーム作家」と言うクリティカルさ。完璧である。
すると急に話が変わり3人の中で今から人気投票を行なうということになった。
急過ぎである。
3人はスクラムを組み、「みんなから玉を貰う」とかなんか訳わかんないことを言っていた。
そしてまた急に話が変わり、赤丸がナビゲーターを始める。
「今から生のロープレ始まりますねん。君達に事前にパスポートを渡してまっしゃろ?そこに10ボンのお金が入ってまんねん。また、入り口のアンケートに答えてくれたら100ボンあげまっせ。それを使って謎を解きなはれ。」
謎って一体何の謎なのか謎なのだが。
つまり説明すると、この企画はお客さんにRPG風のアトラクションを楽しんでもらおうというものである。会場の各地にあるヒントを探しながらアイテムを集めるのである。
またいたるところでハドソンのキャラクターが店を出していた。通貨単位は「ボン」である。
「さあさあさあ、この不思議な杖、150ボンのところ100ボンだ。しかし今日は特別、11ボンだ!」
「買った!」「買う買う!」(必死になるガキ達)
美しい光景だ。
「広井王子がウンチを踏んで捨てた靴、333ボンだよ!」
「それ買います!」(その靴を憧れの眼差しでみつめるお母さん)
美しい………。
またそのロープレ中には登場キャラによる歌が歌われていた。
その中にはチャンバラシーンの後にムード歌謡といった、往年のスターのようなものもあった。
そして私の大嫌いなミュージカルもあった。このミュージカル、男女2人でやっていたのだが、男の方の歌はまあ良かったのだが女の方が超ド下手。音を対数的にはずしまくっている(よう分からんが、それだけはずしているって事)。
ここでインターバル。なんと、ここで広井王子大先生が登場したのだ!余計だ。チェック!チェック!
カブキ団十郎「おれの次回作どうなってんの?」
広井「出ない。」
カブキ「ええーーー!?」
広井「ところで俺のゲームって面白い?面白いよね。みんなそう思うよな!」
カブキ団十郎が拍手を誘うが効果なし。
広井「ZEROってすげー不思議。1月に電源を入れると、あけましておめでとうって出るんだよ。2月には豆まきだしね。」
それだけか?
そして大先生は帰っていった。
その後、今度は卓球少女の愛ちゃんが登場。本人も訳がわからないままここに連れてこられたらしく、ものすごく帰りたそうだった。
帰れ!
そしていよいよ選挙の開始である。その間にまた歌のショーが行なわれた。
あきんどの歌 作詞 広井王子
「我らあきんど、輝ける銭の下僕。守銭奴ーー、守銭奴ーー、守銭奴ーー。」
そんな歌詞、訴えられるよー!
次にハニーの歌、なんとCDを出すらしい。もうバリバリのアイドル曲である。しかもちょっとカントリー風、しかも顔はそんなに良くない。しかも桃太郎役の女の子のほうがかわいかった。
「みんなCD買ってね!」
早送りー!
最後はハドソンのテーマ。ただこの曲はなんか良かった。作曲者を見てみるとなんと野村義男。すげー! ボンバーマンをベースにアレンジされていて、メロディーもつかみやすく、さすがプロという感じだった。
また、投票者へのインタビューもあった。カブキ団十郎がガキ達に一人ずつ「誰に入れる?」と聞いていて、みんな「もちろんカブキ団十郎!」と答えていたが、一人だけ黒ぶちメガネの色白少年が「ハニー………」と答えていた。頑張れ!少年!
さあ投票結果の発表である。
ハニー322票、桃太郎389票、カブキ団十郎401票
意外だったのが、ハニーの得票数の多さである。ルックスで選ぶなら桃太郎だと思うのだが。やっぱアニメ風のコスチュームが良かったのかな?あの時の少年!
そんで(もう疲れてきた)、ロープレのチャンピオンの発表である。アイテムを全て集めたのは22名。その中でまたふるいにかけられ、結局どっかの高校生が選ばれた。ただ、その後の経過が入ってないのでプレゼントなどがあったかどうかは不明である。
ついに劇はフィナーレを迎える。またもや広井王子大先生の作詞による音頭で全員が踊る。
「飲みねぇ、飲みねぇ、寿司食いねぇ。」
パクリもここまでくると尊敬します。
「福岡のみんなありがとう!2500人も来てくれて嬉しいよ!」
福岡って、ここでやってたんかい!
こうして夢まつり'95は無事に終了した。しかし、私の精神は無事では済まなかった。
この後、ビデオテープには広井王子大先生のドアップによる天外魔境のCMが延々と入っていた…………。